入居後に施工ミスや設備の故障があった場合の対処方法

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せっかくのマイホームなのに施工ミスが…!ショックですよね。でも泣き寝入りする必要はないかもしれませんよ。「契約不適合責任」で解決する可能性があります。

「契約不適合責任って何!?」と思った人は売買契約書を手元に用意してこの記事をご一読ください。

[1]民法改正で「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に

まずは、おさえていただきたい「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」について説明します。この2つの内容を把握していないと、入居後に施工ミスや不具合が出た時に困りますので、興味がないという方もざっと目を通しておいてください。

瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

今からおよそ2年前、2020年4月から法改正により瑕疵担保責任は契約不適合責任に変わりました。それぞれの違いは以下のとおりです。

項目瑕疵担保責任契約不適合責任
法的性質法定責任契約責任
対象隠れた瑕疵 (本来備わっているべき性能・機能がない) 契約との不適合 (品質・数量が契約と一致しない)
請求期限納品後1年以内事実を知ってから1年以内に告知 (ただし納品後5年以内で請求権は消滅)
買主が請求できる権利1. 契約解除 2. 損害賠償請求 1. 追完請求 2. 代金減額請求 3. 催告解除 4. 無催告解除 5. 損害賠償
損害賠償責任無過失責任過失責任
損害の範囲信頼利益※履行利益(信頼利益も含みます)

瑕疵とは、本来備わっているべき性能・品質・性能・機能・状態が備わっていないことをいいます。不動産の売買においては、入居後に発見された施工ミスや欠陥、不具合、土壌汚染、シロアリ被害など売主も外部からでは確認できなったことを「隠れた瑕疵」と呼びます。

法改正前は「隠れた瑕疵」が見つかった場合、売主が無過失であっても瑕疵担保責任を負うものとされていましたが、改正後は「隠れていてもいなくても、買主は売主に対して契約不適合責任を追及できる」ことになりました。

この「隠れていてもいなくても」というのが大きなポイントで、契約不適合責任では、瑕疵担保責任のように隠れた瑕疵は問われません。「売買契約書に書かれていたかどうか」がポイントとなります。

たとえば、物件がシロアリ被害にあっていたとします。売買契約内容に「この住宅はシロアリ被害があります」という記載があれば、売主が契約不適合責任を負う義務はありません。

しかし、買主がシロアリ被害のことを把握していたとしても、売買契約書に「この住宅はシロアリ被害があります」という記載がなければ、売主が契約不適合責任を負うことになります。

改正後、もうひとつ目立った変化としては、買主が売主に請求できる5つの権利です。事項で詳しく解説します。

契約不適合責任で買主に与えられた5つの権利

契約不適合責任では「追完請求」「代金減額請求」「催告解除」「無催告解除」「損害賠償請求」の5つが請求できることになりました。

1.追完請求
追完請求とは、改めて完全な給付を請求することをいいます。種類や品質または数量が契約内容と異なっていた場合、買主は売主に完全なものを求めることができます。

2.代金減額請求
追完請求の修補請求をしても売主が修理をしないとき、あるいは修理が不能であるときに認められる権利です。あくまでも追完請求がメインの請求であり、それが駄目な場合には代金減額請求ができます。ただし、明らかに直せないもの、履行の追完が不能であるときは、買主は直ちに代金の減額請求をすることが定められています。

3.催告解除
追完請求をしたにも関わらず、売主がそれに応じない場合に買主が催告して解除できる権利です。売主が追完請求に応じない場合、買主は「代金減額請求」と「催告解除」の2つの選択肢を持っていることになります。契約解除された場合、売主は買主に売買代金を返還しなければなりません。

4.無催告解除
無催告解除は、契約不適合により「契約の目的を達しないとき」に行うことができます。逆にいえば、若干の不具合程度で契約の目的が達成できる場合、無催告解除は認められないということになります。

5.損害賠償請求
瑕疵担保責任でも買主は損害賠償請求ができましたが、瑕疵担保責任による損害賠償請求は売主の無過失責任とされていました。契約不適合責任では、売主に帰責事由がない限り、損害賠償は請求されないことになっています。また、瑕疵担保責任の損害賠償請求の範囲は信頼利益※1に限られますが、契約不適合責任の損害賠償請求の範囲は履行利益※2も含みます。

※1信頼利益…契約が不成立・無効になった場合に、それを有効であると信じたことによって被った損害のこと(登記費用などの契約締結のための準備費用など)。

※2履行利益…契約を締結した場合に債権者が得られたであろう利益を失った損害のこと(転売利益や営業利益など)

契約不適合責任の対象

先に説明したとおり、契約不適合責任では隠れた瑕疵は問われません。「売買契約書に書かれていたかどうか」がポイントとなります。

契約不適合責任の対象になるのは、雨漏りやシロアリ被害、給排水管の故障などです。新築建売住宅の場合、その他にも広範囲の施工ミスが対象となりえます。売買契約書に記載があるはずですので、必ず確認しておきましょう。

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[2]入居後に施工ミスを見つけた時の流れと注意点

それでは、当記事の本題です。

入居後に施工ミスを見つけた時の流れ

ケースバイケースにはなりますが、基本的には以下のような流れになります。

1.売主または建築会社へ連絡する
売主または建築会社へ施工ミスや不具合の内容を伝えて確認しに来てもらいます。念のため、施工ミスの部分の写真撮影をしておいてください。これは記録として残しておくためでもありますが、トラブル防止のために写真撮影しておくことをおすすめします。

2.売主または建築会社が確認に来る
通常、買主から施工ミスや不具合があったと連絡がきたら、日程調整をして現地に確認に来てくれるはずです。なあなあにならないうちに早めに来てもらうようにしましょう。

3.対応方法(補修の可否や補修工事の内容)について説明を受ける
売主や建築会社が実際に不良個所を確認したら、補修の可否や補修工事の内容について説明を受けます。具体的には、「補修の対象となる不具合なのか」、「有償なのか無償なのか」、「工事の期間はどのぐらい要するのか」などです。

4.補修工事を行う
不良個所によっては工事がすぐに終わらないこともあります。工事中は在宅していなければならないので大変ですが、上手く日程調整をしましょう。

5.補修工事後の確認をする
補修工事が完了したら、自分の目で確認をします。問題がなければこれで完了です。

売買契約内の「契約不適合責任」を確認する

契約不適合責任は、瑕疵担保責任のように隠れた瑕疵は問われないため、物件の瑕疵が売買契約書に記載されているか必ず確認しましょう。本来なら、売買契約時に確認することがベストです。

具体的な瑕疵の範囲は、以下のとおりです。

◎建物(物理的瑕疵)
・雨漏り
・シロアリ被害
・給排水管の故障
・構造上主要な部位の腐食
(一戸建てはすべてに該当するが、マンションの場合は木部の腐食を除いた3つとなる)

◎土地(法律的瑕疵)
・軟弱地盤
・不同沈下
・土壌汚染
・地中埋設物

◎心理的瑕疵
買主に精神的影響を与える事象(殺人事件や放火など)があった場合。

◎環境的瑕疵
物件周辺に暴力団の事務所やカルト集団の施設などの環境に瑕疵がある場合。

契約不適合責任の通知期間をチェックする

瑕疵担保責任の場合、瑕疵があった場合は「買主が瑕疵を知った時から一年以内に契約を解除するか損害賠償の請求を行う」と定められている一方、契約不適合責任では、適用期間について以下のような定めがあります。

 

“新民法第566条

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない”

 

つまり、物瑕疵を知った時から一年以内に「通知する」だけで契約不適合責任の履行を求められるようになったということです。

一年以内に通知しなかった場合は、その不適合を理由とする①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④解除をすることができません。

一年以内と聞くと短いような気がしますが、売主側からすると引き渡しから10年後であっても買主が瑕疵を発見してから一年以内に通知をすれば賠償を請求できるということになり、売主の負担が大きくなってしまうのです。

そこで個人が売主の場合は、瑕疵担保責任を負う期間を2~3カ月程度、そして免責(=契約不適合責任がない)とするケースがほとんどです。

売主が不動産会社の場合は、瑕疵担保責任を負う期間を2年以上としなければならないと宅地建物取引業法により定められています。

[3]入居後に施工ミスなどのトラブルを避けるには

入居後、トラブルを避けるには以下のことを注意しましょう。

・入居前の内覧会でミスや不具合がないかチェックする。
・売買契約書の内容を把握する。瑕疵担保責任について必ず確認しておく
・入居前か入居後、いつついた傷なのか分からないものは対象外と思っておく
・無償で修繕してもらえるアフターサービス対象確認しておく

この4つは絶対におさえておきたいところです。できれば売買契約時や内覧会の時点で気付けるものは気付いておけたらベストです。もちろん、入居後に思わぬ瑕疵が見つかることもあります。その場合は一年以内に通知をしましょう。

[4]まとめ

「新築だから絶対に大丈夫」とは限りません。

今回の記事では、入居後に施工ミスを見つけた時の流れや注意点、契約不適合責任について解説しました。新築だから施工ミスや不具合なんてないどろうとおもってしまいがちですが、「新築だから絶対に大丈夫」とは限りません。売買契約時には売買契約書に書かれている契約不適合責任の箇所をしっかりと確認しておく、内覧会では見落としがないようにチェックする、それでも入居後に施工ミスや不具合が見つかったら、売買契約時を確認し、売主または不動産会社に連絡しましょう。

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