借地権はやめた方が良い?メリットデメリットを詳しく解説します!

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借地権はやめた方が良い?メリットデメリットを詳しく解説します!

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不動産物件検索サイトや広告などで、「お!この物件安い!」と思って詳細を読んでみると「借地権」付き物件だったことはありませんか?

借地権…って何だろう?人から借りた物?分譲なのに?

広告を読むだけでは「価格が安い」以外は分からないことが多いかと思いますので、今回の記事は、借地権の特徴やメリットデメリットについて詳しく解説します。

[1] 借地権って何?

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まずは借地権とは何なのか、所有権との違いについて説明します。

所有権と借地権の違い

借地権とは、地主に地代(土地の賃料)を払って土地を借りる権利のことです。一般的な売買における所有権付きの物件とは内容が全く異なります。

所有権と借地権の違いを下記にまとめてみました。

土地の名義建物の名義(土地の)自由度
所有権自分自分あり
借地権地主自分なし

大きな違いは、土地の自由度です。借地権の場合、土地の名義は地主にあるので、増改築などは地主の許可が下りないと出来ません。

借地権付きの土地で起こるトラブルは「地代の値上げ」「地主に無断で借地上の住宅を増改築&売却され、別の人が住んでいる」など、様々です。借地権付きの物件は、あくまでも人に借りている土地ですので、地主と土地を借りる人との関係性はかなり重要になってきます。

[2]借地権の種類

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借地権には、「旧借地権」「普通借地権」「定期借地権」の3つがあります。それぞれの特徴を解説します。

旧借地権

大正10年に制定された借地法です。1992年(平成4年)8月より前に土地を借りている場合は旧借地権となります。

平成を過ぎてから、旧借地権は少なくなりましたが、ゼロではありません。旧借地権は、木造の場合、契約期間は30年(最低20年)で更新後は20年。鉄筋コンクリートの場合は60年(最低30年)で更新後は30年となっています。

下記は旧借地権の存続期間をまとめたものです。

存続期間更新1回目以降の存続期間
木造期間の定めがない場合30年20年
木造期間の定めがある場合20年以上20年以上
鉄筋コンクリート期間の定めがない場合60年30年
鉄筋コンクリート期間の定めがある場合30年以上30年以上

借りた側にとっては半永久的に土地を借りられるのでメリットが大きいですが、地主にとっては、貸した土地がなかなか返してもらえないというデメリットがあります。さらに、地主に建物の買い取りを要求できる権利が認められているため、旧借地権での土地の貸し出しをしたがらない地主は多くいます。

普通借地権

平成4年8月から施行されている借地法です。旧借地権と異なり、契約の更新を前提として土地を貸します。

借地権の契約期間の当初は30年、更新1回目は20年、それ以降は10年と徐々に契約期間が短くなっていきます。合意の上の更新であればこの期間よりも長くすることも可能です。

普通借地権の存続期間は以下のとおりです。

存続期間更新1回目の存続期間更新2回目以降の存続期間
期間の定めがない場合30年20年10年
期間の定めがある場合30年以上20年以上10年以上

定期借地権

こちらも平成4年8月から施行されている借地法のひとつです。普通借地権とは違い、更新がありません。ただ、期間満了時、土地を更地にして返還する義務があります。

さらに定期借地権には、「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」の3つがあります。文章で説明するよりも一覧で見た方が分かりやすいかと思いますので、それぞれの特徴を下記にまとめました。

定期借地権の種類(引用元:国土交通省 定期借地権の解説より)

借地権存続期間利用目的契約方法借地関係の終了契約終了時の建物
一般定期借地権50年以上用途制限なし公正証書等の書面で行う。 [1]契約の更新をしない [2]存続期間の延長をしない [3]建物の買取請求をしない という3つの特約を定める期間満了による原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する
事業用定期借地権10年以上50年未満事業用建物所有に限る(居住用は不可)公正証書による設定契約をする。 [1]契約の更新をしない [2]存続期間の延長をしない [3]建物の買取請求をしない という3つの特約を定める。 期間満了による原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する
建物譲渡特約付借地権30年以上用途制限なし30年以上経過した時点で建物を相当の対価で地主に譲渡することを特約する。口頭でも可建物譲渡による[1]建物は地主が買取る [2]建物は収去せず土地を返還する [3]借地人または借家人は継続して借家として住まうことができる

借地権付き戸建てやマンションで主に利用されているのは「一般定期借地権」です。ただ、供給量でいうと多いとは言えません。

国土交通省の「平成21年度定期借地権付住宅の供給実態調査」によると、平成21年の定期借地権付き住宅供給戸数は、一戸建てが422戸となっており、平成12年の20,711戸をピークに大幅に減少しています。

[3]借地権を借りる時の費用

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近年の住宅ローンの金利は0.4%〜1.5%程度となっており、超低金利時代といわれています。金利が低いということは、それだけ住宅ローンを借りやすいということ。下記で詳しく説明します。

借地権を借りる時の費用(借地料)も気になるところですね。

借地料の相場は、「地域」「土地の利用方法」「地代の種類」によって変わってきます。地域によっても地価も異なりますし、個人で利用するのか事業用として利用するのか、地代の種類(新規地代or継続地代)によっても異なります。

一番分かりやすいのは固定資産税からの計算方法です。固定資産税を基準にする場合、固定資産税評価額の2~4%程度が最低水準となります。ただ、「地域」「土地の利用方法」「地代の種類」によってさらに高額になることもあります。

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[4]借地権のメリット

借地権付き物件のメリットを見ていきましょう。主に価格に関してのメリットが2つあります。

・所有権物件よりも価格が安い
借地権物件は、所有権物件と比べて80%程度の価格であることが多いです。やはり安いのは大きなメリットですね。ただし、毎月地主に地代を支払わなければならないので、総合的な支出に関しては必ずしも安いとも言い切れない場合もあります。

・土地部分の税金がかからない
土地は地主から借りたものなので、固定資産税や都市計画税などの税金はかかりません。ただ、建物は固定資産税と不動産取得税支払う義務がありますのでご注意ください。

[5]借地権のデメリット

次に、借地権のデメリットを説明します。メリットが2つだったのに対して、デメリットは5つあります。借地権が悪いというわけではなく、注意しておきたい点が多いということです。価格の安さだけで判断せず、デメリットも理解した上で検討してくださいね。

・土地の金額が上昇したら地代も上がる
借地権は、毎月地主に地代を支払う義務があります。地主との合意の上で契約内容は決まりますが、土地の金額が上がれば、地代も上がるケースが多いです。

・住宅ローンが組めないことがある
住宅ローンは、物件を担保にして融資をする仕組みのため、金融機関によっては住宅ローンが組めない場合があります。フラット35は一定の要件を満たせば融資可能なケースもありますので、不動産会社や金融機関に確認してみると良いでしょう。

・増改築する場合は地主の許可が必要
土地の所有権は地主にあるので、増改築は無断で出来ません。もし無断で増改築を行った場合、借地契約を解除されるだけではなく、裁判沙汰になる可能性もあります。

増築の場合は「床面積を増加させる」「同一敷地内に別の建物を追加する」などがこれにあたります。改築の場合は、建物を壊して新しく建て直すことを一般的には指しますが、契約の際に、どこからが増改築にあたるのか明確にしておきましょう。

・中途解約は原則不可
地主は、長期的に地代を徴収して収益をあげることを目的にしているので、中途解約は原則応じられません。また、借地権は相続できるため、借主が死亡した場合は相続人に引き継がれます。

・期間満了後は更地にして地主に返さなければならない
原則、更地返還を求められることが多いようです。その場合の解体費用は、借り主が負担することが一般的です。ただし、建物に資産価値が残っている場合は、地主に建物を買い取ってもらうことも可能です。

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借地借家法第十三条(建物買取請求権)
引用元:国土交通省 定期借地権にかかる鑑定評価の方法等の検討

借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

2 前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

3 前二項の規定は、借地権の存続期間が満了した場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。

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[6]借地権の相続について

売却は地主の許可が必要ですが、相続は譲渡ではないので地主の許可は必要ありません。借地権も相続税の対象になります。

なお、生前贈与の場合は、相続ではなく贈与となります。地主への名義の書き換え料や贈与税が課税されることがあります。

ご不明な点は、国税庁の相談センターまでお問い合わせください。
国税庁ホームページ 国税に関するご相談について

[7]借地権物件と所有権物件との比較

ここまで読んで、借地権物件と所有権物件、どちらが良いのか迷われている方も多いかもしれません。それぞれのメリットデメリットを下記にまとめましたので参考にしてください。

借地権物件と所有権物件のメリットデメリット

メリットデメリット
借地権物件・所有権物件よりも価格が安い ・土地の固定資産税や都市計画税がかからない ・住宅ローンを組みにくい。 ・毎月、地代の支払いが必要。土地代が上がれば地代も値上がりする可能性がある。 ・原則、期間満了後は土地を更地返還しなければならない(解体費用がかかる) ・売却は原則可能だが、地主の許可が必要。
所有権物件土地も建物も所有権は自分にあるので、増改築や売却なども自由に出来る・土地の固定資産税や都市計画税がかかる ・借地権物件よりも価格が高い

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[8]まとめ

所有権と借地権はまったくの別物。価格の安さだけで判断しないで!

借地権物件は、価格が安い点が魅力的ですよね。数としては減少傾向にありますが、都心にはわりと借地権付き物件が多く存在します。憧れのエリアでマイホームを購入するのも夢ではありません。でもその安さの秘密は、土地の価格が含まれていないから。所有権物件のように土地と建物トータルの価格ではないので、安いのは当たり前なのです。所有権がないということは、増改築や売却も地主の許可が必要。自分の物ではないので自由度は低くなります。

安い、高いで判断しないで、所有権と借地権のそれぞれのメリットデメリットを理解した上で選択してくださいね。

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