【住宅ローン】月8万円の返済で家を買うのは可能?

【住宅ローン】月8万円の返済で家を買うのは可能?

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国交省の住宅市場動向調査(令和3年度)によると、住宅ローンの月々の返済額の平均は、新築建売住宅10万5,000円(年間126万円)、中古一戸建て8万6,000円(年間99.7万円)でとなっています。

今回は、多くの人が考える月々の住宅ローン返済は「月8~10万円」と想定して、月8万円の住宅ローン返済で家を買えるのか、解説したいと思います。

[1]住宅ローン返済額の相場

まずは、住宅ローン返済額の相場(全国)を物件種別ごとにみていきましょう。

物件種別月々の返済額
新築マンション12万3,100円
土地付き注文住宅11万9,500円
新築建売住宅10万300円
中古マンション8万5,600円
中古一戸建て7万4,100円

参考:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査2020年度」

「注文住宅よりも新築マンションの方が高いの?」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。注文住宅の方が高いというイメージがありますが、近年はマンションブームで販売価格が高騰しています。

住宅金融支援機構が発表した「フラット35利用者調査2020年度」によると、物件種別ごとの所要資金の全国平均は、新築マンション4,545万円、土地付注文住宅4,397万円、新築建売住宅3,495万円、中古マンション2,971万円、中古戸建住宅2,480万円となっており、月々の返済額と同じ並びになっています。

月8万円の返済額でおさまるかどうかは、物件種別によって異なりそうですね。

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[2]月8万円の返済で借りられる額は?

月8万円の返済だと住宅ローンはいくら借入できるのかシミュレーションしてみましょう。

【設定条件】
頭金:なし
金利:全期間固定金利1.5%

返済期間月々の返済額借入可能額総返済額
15年8万円1,288万円1,440万円
25年8万円2,000万円2,400万円
35年8万円2,612万円3,359万円

最長の35年まで延ばせば、月々の返済額は同じでも借入可能額を多くすることができます。ただし、利息の負担額も増えるため、総返済額が多くなってしまうのでご注意ください。

[3]返済比率について

返済額を考える際におさえておきたいのは、返済比率(返済負担率)です。返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合のことです。

返済比率は金融機関によって異なる

返済比率は金融機関や住宅ローンの種類によって異なり、おおむね30~35%程度に設定されています。

フラット35の返済比率
年収400万未満400万以上
返済負担率30%以下35%以下

フラット35の返済比率の基準は一律で、年収が400万円未満の場合は30%以下、400万円以上は35%以下です。たとえば、年収400万円の場合は「400万円×35%=140万円」が年間返済額の上限です。これを12カ月で割ると「140万円÷12カ月=約11万6666円」が月々の返済額の上限になります。

民間住宅ローンの返済比率の例
年収100万以上300万未満300万以上450万未満450万以上600万未満600万以上
返済負担率20%以下30%以下35%以下40%以下

一方、民間住宅ローンの場合、返済比率の基準は一律ではなく、金融機関によって設定が異なります。フラット35よりも基準が厳しいですが、年収600万円以上は返済比率40%以下なので、フラット35よりも基準がゆるめです。

返済比率の計算方法

返済比率は「返済比率=年間返済額÷額面年収×100」で計算できます。

この計算で用いる年収は「手取り年収」ではなく、「額面年収」です。額面年収と手取り年収の差は、扶養家族や保険などによって異なりますが、額面年収から税金や保険料を差し引くと、8割程度残った数字が手取り年収となります。たとえば、年収500万円の場合、手取り年収は500万円×80%=約400万円となります。

[4]返済額を決める時のポイント

住宅ローンの返済額を決めるときは、どのようなことを注意したらよいのでしょうか。

「借りられる額」よりも「無理なく返済できる額」を重視する

返済比率はできれば20%以内、さもなければ25%以内に抑えることが望ましいとされています。

たとえば、手取り年収400万円の人が毎月8万円(年間96万円)で返済したい場合、返済比率は96万円÷400×100=24%となります。

「金融機関の返済比率は30~35%なのだから、もっと借りられるのでは?」と思われる方も多いかと思いますが、「借入限度額=無理なく返済できる額」ではありません。家計を圧迫して返済が滞る可能性が高くなります。

特に注意が必要なのは、フラット35の審査金利です。実際に住宅ローンを組むときの金利で返済額を計算するので、民間の金融機関よりも借入金額も多くなり、つい借入可能額ギリギリまで借りてしまう方が多いのですが、いざ返済がスタートすると生活が苦しくなってしまうケースも珍しくありません。

フラット35に限らず、どんなローンであっても「借りられる額」ではなく「借入限度額=無理なく返済できる額」を最優先してください。

ランニングコストも含めて計算する

家を買うと決めた時点で、購入費用だけではなく、ランニングコストについても資産計画に入れておかなければなりません。

具体的に言うと…

・不動産取得税
不動産を取得した者が課税する地方税のことです。毎年かかる固定資産税とは異なり、支払いは一度きりで終わります。

・固定資産税
毎年1月1日時点で土地や建物を所有している方に対して課せられる税金です。不動産を所有している限り、支払いは毎年続きます。

・都市計画税
市街化区域内に土地・建物を所有している者に課せられる税金です。市街化区域に属さない地域であれば都市計画税は課税されません。

・火災保険や地震保険
保険料の平均額は年間1万~2万円程です。オプションを付けた場合は、さらに保険料が高くなります。

・家のメンテナンス代やリフォーム代
メンテナンス費で一番高額になりがちなのが、壁の修繕費。100~130万円前後が相場です。ほかにも屋根の塗装や修繕、水回りのリフォームなど、経年劣化とともにメンテナンスに費用がかかります。

また、一戸建てか、マンションかによってかかるお金は違ってきます。一戸建ては、窓や庭からの侵入経路が多いため、ホームセキュリティにお金をかける人が多く、マンションは毎月管理費・修繕積立金がかかります。駐車場を借りている場合はこれらのコストもかかります。

金利の変動に注意する

住宅ローンの金利によっても返済額は変わります。全期間固定金利型は借入期間中、ずっと金利が変わらないですが、変動金利型は、金利が上昇すれば返済額が高くなります。住宅ローンの金利について理解しておきましょう。

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・変動金利型
金利が半年ごとに変動し、5年ごとに返済額が見直されます。5年間は元金と利息の割合を調整して返済額が変わらないようになっていますが、金利が上がると返済額も高くなります。

メリット
・固定金利よりも金利が低い
・金利が上昇しなければ固定金利よりも返済額は少ない

デメリット
・金利上昇のリスクがある
・金利が上昇すれば、返済額が高くなる

向いている人
・金利の動向をこまめに確認できる人
・返済期間が短い、借入金額が少ない人
・金利が上昇して返済額が増えても経済的に余裕がある人

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・全期間固定金利型
全期間固定金利型は、借入期間中は金利が変わりません。返済額は、金利がずっと変わらないので完済まで一定です。

メリット
・返済額が変わらないので将来のライフプランがたてやすい
・金利が変わらない安心感がある

デメリット
・変動金利よりも金利が高い
・今後、金利が低くなれば変動金利よりも返済額が多くなる

向いている人
・安定した資金計画を立てたい人
・今後、教育費などで支出が多い人

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・固定期間選択型
適用される金利の期間が決まっており、期間終了後に適用金利を選択します。固定期間は1~30年の間で、金融機関ごとに設定が異なります。固定期間が終了すると、その時点での金利に見直されます。その際は、変動金利型か固定期間選択型かを選択できます。

メリット
・固定期間中は毎月返済額が増えない安心感がある
・固定期間経過後に金利が下がっていれば、低い金利を享受できる

デメリット
・固定する期間が長くなればなるほど、金利は高くなる
・固定期間経過後に金利が上がっていた場合、返済額が増える

向いている人
・教育費がかかる一定時期だけ返済額を安定させたい人
・車のローンなど、返済が重なる時期だけ返済額を抑えたい人

[5]借入額が足りない場合はどうする?

買いたい物件の価格に借入可能額が足りないこともあるでしょう。その場合の対処法を紹介します。

・頭金を用意する
安全かつ王道な方法です。頭金が多ければ多いほど借入可能額を増やすことができます。ただし、頭金が貯まるまで家を買わないという選択は、ご自身の年齢や金利の状況によっては得策ではない場合もあります。頭金が貯まるまでの間に欲しい物件が売れてしまうことも多々ありますので、頭金を貯めることだけを重要視しないようにしてください。

・返済期間を長くする
先に解説しましたが、月々の返済額は同じでも、返済期間を最長の35年まで延ばせば、借入額を増やすことができます。総返済額が多くなるのはちょっと…という方は、まずは35年返済でスタートし、途中で繰り上げ返済をして総返済額を少なくする方法がおすすめです。

・親から資金援助を受ける
親や祖父母から資金援助を受けるという方法です。注意点はひとつあって、それは贈与税です。1年間に受け取ったお金の合計額が110万円(基礎控除額)以内であれば非課税となりますが、受け取り方によっては親子間でも贈与税がかかってしまいます。

詳しくはこちらの記事をご一読ください。
親から資金援助を受ける時の注意点

[6]【年収別】返済額の目安

最後に、額面年収と手取り年収別に「借りられる額」と「無理なく返せる額」を以下にまとめましたので参考にしてください。

各計算方法
 ・借りられる額…「返済比率30-35%(額面年収)」
 ・返せる額…「返済比率20%(額面年収)」
 ・無理なく返せる額…「返済比率20%(手取り年収)」
 ・頭金0、ボーナス払いなし、35年ローン

額面年収手取り年収借りられる額無理なく返せる額
300万円238万円2,571万円1,359万円
400万円313万円3,999万円1,788万円
500万円389万円4,999万円2,222万円
600万円459万円5,999万円2,622万円
700万円527万円6,999万円3,011万円
800万円593万円7,999万円3,388万円
900万円661万円8,000万円(貸付上限)3,776万円
1,000万円730万円8,000万円(貸付上限)4,170万円

頭金とボーナス払いは含めずに計算しているので、頭金を用意できればこの試算表よりも借入額は多くなります。実際に計算してみないと正確な数字は出せませんので、あくまでも目安としてお考えください。

[7]まとめ

月8万の返済額でも家は買えますが、買いたい物件によっては足りないかもしれません。その場合は、記事内で解説した方法を検討してみてください。

住宅ローンは返済比率をもとに、借入金額を決めるべきものです。適切な借入額や返済期間は、人によって異なりますので、まずは金融機関や不動産会社に行って資金計画を立ててみましょう。

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