親から資金援助を受ける時の注意点

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時々お客様から「親から資金援助を受けた場合、いくらの家を買えますか?」というご質問をいただくことがあります。資金援助を受けられれば買える物件価格もアップできますから、甘えられるのであれば資金援助を受けて物件の選択肢を広げたいですよね。

ただ、親から資金援助を受ける時はちょっと注意も必要なのです。そもそも、親からお金を受け取ると贈与税がかかるということをご存知ない方もいらっしゃいます。「え!?」と驚いた方、要注意ですよ。親子間のお金の受け渡しであっても贈与税はかかるのです。そして申告も必要です。

意外と簡単な話ではない親から資金援助の話。記事内で詳しく解説したいと思います。

[1] たとえ親子であってもお金をもらったら贈与税はかかる

たとえ親子であってもお金をもらったら贈与税はかかる

通常、親子間でのお金の受け渡しは、贈与額がかかります。たとえ親子であっても祖父母であっても、です。子どものお小遣いと違って百万単位の大金が動くわけですから、当然と言ったら当然ですよね。

ただ、1年間に受け取ったお金の合計額が110万円(基礎控除額)以内であれば非課税となります。また、マイホームの取得、新築、増改築のための費用を親や祖父母からもらう場合は「住宅取得等資金贈与の非課税」という制度を利用することで、一定額まで非課税となります。

[2]親から資金援助を受ける方法

親から資金援助を受ける方法

親から資金援助を受ける方法は主に以下の2つがあります。

暦年贈与

贈与税は、年間110万円までは非課税となります。これを暦年課税といいます。

暦年贈与は、毎年110万円までは非課税で贈与を受けることが可能です。この仕組みを利用して、大金を一度にもらうのではなく、年間110万円までの贈与を受けるという人もいます。

住宅取得資金贈与の特例

住宅取得資金贈与の特例は、親や祖父母などから「住宅の取得」を目的とする贈与を受けた場合、一定額までは贈与税がかからない制度です。

さらに、年間110万円までは非課税となる暦年贈与と併用することが可能です。利用条件を満たしていれば700万円までは非課税となり、さらに110万円の基礎控除と併せれば合計810万円までは贈与税がかかりません。(ただし、一般的な住宅の場合と省エネ住宅などの場合では贈与税の非課税額が異なります)

住宅取得資金贈与の特例で非課税となる条件については、次項で詳しく解説します。

[3]非課税になる条件

住宅取得資金贈与の非課税特例を利用するには、以下の条件をすべて満たしていなければなりません。

贈与される人の主な条件

1住宅の取得に充てるために金銭の贈与を受け、実際にその金銭を住宅の取得資金に充てていること。
2贈与を受けた年の翌年の3月15日までに引き渡しを行って居住すること。または居住することが確実に見込まれていること。
3直系尊属(父母または祖父母)からの贈与であること。
4贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であること。
5贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
6住宅の取得・新築・増改築の契約の相手方は自身の配偶者、親族など特別の関係がある人でないこと。
7贈与を受けたときに日本国内に住所があること(一定の場合を除く)
8贈与の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行うこと。

建物の条件(新築・中古)

新築と中古の条件は以下のとおりです。

建物の条件(新築)

1家屋の登記簿上の床面積(マンションの場合には、その区分所有する部分の登記簿床面積)が50平米以上240平米以下であること。
2家屋の床面積の1/2以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるものであること。
3贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住していること、または居住することが確実に見込まれていること。

建物の条件(中古) 以下3つのいずれかを満たすものが対象

1マンションなど耐火建築物は築25年以内、木造などは築20年以内。
2一定の耐震基準をみたすことが建築士等によって証明された住宅。
3購入後に耐震改修工事を行い、贈与を受けた年の翌年3月15日までに建築士等によって一定の耐震基準に適合すると証明された住宅。

省エネ・耐震・バリアフリーの住宅

以下のうちいずれかの要件を満たす住宅を購入する場合は、非課税枠が500万円加算され、1200万円となります。つまり、基礎控除とあわせると1,310万円まで非課税になるということです。

省エネ断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上相当であること
耐震耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること
バリアフリー高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること

[4]住宅資金贈与の非課税限度額

住宅を購入した時期(契約締結)によっても非課税の限度額は異なります。また、省エネ・耐震・バリアフリーについていずれか一定の基準を満たす住宅は、非課税限度額が高めに設定されています。

新築住宅や不動産会社が売主の中古住宅などを購入した場合

契約締結した時期省エネなどの住宅一般の住宅
2020年4月~2021年3月1,500万円1,000万円
2021年4月~12月1,200万円700万円

※10%の増税に伴い、2019年4月1日以降に売買契約や工事請負契約を結び、住宅に10%の消費税がかかっている場合は、非課税枠が2500万円に拡大されました。この拡大の取り組みは、2020年3月31日の契約まで1年間に限り、その後の非課税枠は2020年4月1日~2021年3月31日の契約は1000万円、2021年4月1日~同年12月31日の契約は700万円と、段階的に縮小されます。

個人が売主の中古住宅など、上記以外の住宅を取得する場合の非課税限度額

契約締結期間省エネなどの住宅一般住宅
2020年4月~2021年3月1,000万円500万円
2021年4月~2021年12月800万円300万円

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[5]住宅取得資金贈与の非課税特例を利用する際の注意点

この項目では、特例を利用する際に注意しておきたい点について説明します。なお、特例の適用期限は2021年12月31日までです。1日でも遅れたら適用外となりますのでご注意ください。

贈与を受けた翌年2月1日~3月15日までに贈与税の申告が必要

特例を利用するには、贈与を受けた翌年2月1日~3月15日までに贈与税の申告が必要です。申告漏れが発覚した場合はペナルティが発生する可能性がありますので、必ず申告しましょう。

申告の際は、以下の順で申告書を作成し、贈与税の申告書や戸籍謄本などの必要書類を揃えて税務署に提出してください。

1.贈与時の財産の時価を計算した後、贈与税額を算出する
2.贈与税の申告書に記入する
3.戸籍謄本などの必要書類を添付する

贈与税の計算は、その年の1月1日~12月31日までの1年間に贈与を受けた価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引き、残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。

下記に便利な速算表をご用意しましたのでご活用ください。(基礎控除額の110万円を差し引いた後の金額を当てはめて計算してください)

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

具体的な計算方法や必要書類に関しては、国税庁のホームページからご確認ください。

贈与税の計算と税率(暦年課税)

必要書類など【贈与税の申告等】

[6]親から資金援助を受ける時の注意点

ただ親からお金を受け取って返していけば良いというものでもありません。ここでは、親から資金援助を受ける時に注意しておきたい3つのポイントについて説明します。

贈与額が非課税額の範囲内であっても申告は必須

親から資金援助を受けたら、たとえ非課税額の範囲内だったとしても贈与税の申告は必須です。黙っていればバレないのではないかという考えは甘いですよ。税務署に怪しまれたらかなりの確率でバレます!

なぜバレのかというと、一番の原因は不動産の登記です。不動産の登記が行われると、その内容は法務局から税務署に筒抜けになります。

そして、税務署は登記の情報をもとに、家を購入した人へ「お買いになった資産の買い入れ価額などについてのお尋ね」という文書を送付します。

文書の内容は、主に以下の3点

・不動産を購入した人の職業、年収
・不動産の所在地、売主の住所・氏名、購入金額など
・購入資金の調達手段(預貯金、借入金、資産の売却代金、資金援助など)

これに回答するかは任意です。親から資金援助を受けたことを知られたくないから回答を無視するという人もいますが、この段階で、税務署から「無視するということは、もしかしたら資金援助を受けたのではないか」と疑われること間違いなしです。

申告漏れが見つかった場合、以下のようなペナルティが課されます。

・無申告加算税:申告を忘れていたことに対するペナルティ
・重加算税:わざと申告しなかった場合に無申告加算税の代わりに課税される
・延滞税:納税遅れたことに対するペナルティとして課税

税務署から逃げるのはまず無理です。隠しておくことで、かえって損をしてしまう可能性の方が高いですよ。親から資金援助を受けたら、たとえ非課税額の範囲内だったとしても必ず申告をしましょう!

お金をもらう場合は贈与契約書、借りる場合は借用書を作成する

親子間といっても、資金援助を受ける時はきちんと借用書を交わすことが重要です。

借用書は「いくらを、いつまでに、どのようにして返済するのか」を明確にしておくことが重要です。返済日を設けずにお金がある時に返す方法や、お金を無利息で借りる方法だと、税務署に贈与とみなされるかもしれません。

お金をもらうにしても借りるにしても、以下の3つの点に注意をしてください。

①返済は、銀行振込みなど、確実に履歴が残る方法にすること

②お金をもらう場合は贈与契約書、借りる場合は借用書を作成し、両者が署名押印して保管しておくこと。(借用書には、借入額・金利・返済開始日・返済方法・月々または年間の返済額などを明記する)

③借用書の内容通りに返済すること

返済方法は銀行振込がベスト!「返済している」という記録を残す

親からお金を借りる場合の返済方法は、手渡しではなく銀行振込にしましょう。「返済している」という記録をしっかり残しておくことが大切なのです。

面倒だからといって手渡しではいけません。借用書通りの日付に「預金口座から預金口座へ」銀行振込で返済することを徹底してください。

縁起でもない話ではありますが、贈与した親が死亡して相続があったときが問題です。申告していれば問題ないといえばないのですが、親の出金履歴を過去にさかのぼって調査され、「返済している」という記録が残っていない場合、きちんと返済しているのか怪しまれたら厄介です。面倒ではありますが、必ず返済した記録が残るようにしてください。

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[7]まとめ

「住宅取得資金贈与の非課税特例」の適用期限は2021年12月31日まで!

今回ご紹介した「住宅取得資金贈与の非課税特例」は、親から資金援助を受けるなら知らなかったでは済ませてはならない制度です。記事内でもご説明したように、特例を利用すれば暦年贈与と併用することが可能です。700万円までは非課税、さらに110万円の基礎控除と併せれば合計810万円までは贈与税がかかりません。適用期限は2021年12月31日までです。

特例を利用しないにしても、親から資金援助を受けたら、たとえ非課税額の範囲内だったとしても必ず申告をしてくださいね。

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