住宅ローンの返済期間と繰り上げ返済について

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住宅ローンの返済期間と繰り上げ返済について

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前回の記事では住宅ローンは最長何年で組めるのか、何年がベストなのかについて解説しました。

結論としましては、定年退職までに完済できるように設定することが理想ということになりますが、返済期間は10年と25年、5年と20年という具合に分けられることはご存知でしょうか。

意外とご存知ない方も多いので、今回は返済期間の組み合わせ方について解説したいと思います。それにあわせて、ご質問の多い繰り上げ返済についてもお話します。

[1] 住宅ローンの返済期間について

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まずはタイトル通り、住宅ローンの返済期間についてご説明します。

返済期間の組み合わせは可能?

返済期間を「2,500万円の借入を30年」「500万円の借入を10年」という具合に、借入を2本に分けることもできます。このようなローンを「2本立てローン」といいます。

たとえば、3,000万円の住宅ローンを35年返済で組む場合、返済額は以下のようになります。

借入額返済期間金利月々の返済額
3,000万円35年1.22%87,796円

※元利均等返済/ボーナス払いなし

これを2本立てローンにした場合…

借入額返済期間金利月々の返済額(10年目まで)月々の返済額(11年目以降)
2,500万円35年1.22%73,163円
500万円10年0.9%43,585円
合計116,748円73,163円

※元利均等返済/ボーナス払いなし

上図で説明しますと、2本立てローンにした場合、1本で組む時よりも返済当初10年間の返済額は多くなりますが、11年目以降はその負担を減らせます。なおかつ、500万円分については、適用金利が下がったため、総返済額を90万円抑えられることが分かります。

ちなみに、フラット35とフラット20を組み合わせできる「ダブルフラット」という住宅ローンもあります。2つの借入申込者が同一であることなどの条件は厳しいですが、選択肢のひとつとして検討されてみてはいかがでしょうか。

ダブルフラットについてはこちらからご確認ください。

途中で返済期間の変更はできる?

長期の住宅ローンを組んでいたけれど、家計に余裕ができたから返済期間を短くしたい、という場合はどうなるのでしょうか。

返済期間の変更は、できなくもないですがそう簡単なものではありません。なぜなら、返済期間を短くする場合、月々の返済額が増えるからです。その時点での年収で返済できるのか金融機関が審査をして、問題なければ返済期間を短くすることが可能です。

返済期間を長くする場合ならハードルが低いのかというと、完済時の年齢が何歳になるのかによっても変わります。たとえば、50歳の方が30年返済で住宅ローンを組んでいた場合、完済時は80歳です。5年延長して35年返済に変更すると、完済時は85歳になりますよね。多くの金融機関では、住宅ローンの完済年齢を80歳までとしていることが一般的ですので、延長できるかは借主の年齢によります。また、借入の年齢が若くても、借入当初から35年にしている場合はそれ以上の延長はできません。

共働き夫婦なら返済期間の違うローンを組むこともできる

共働き夫婦が増えたことにより、夫婦で住宅ローンを組むケースも増えています。ペアローンにして夫婦でそれぞれ借入すれば、返済期間が別々の住宅ローンを組みことが可能です。

たとえば、夫が20年のローン、妻が10年のローンを組むという方法もあります。子どもの教育費がかからない10年間(赤ちゃん~小学生ぐらいまで)は妻がローンの返済をして、その後の20年は夫がバトンタッチ。妻が仕事を続けていればその収入は教育費や貯蓄に充てるか、家計に余裕があるのなら繰り上げ返済に回す、という具合ですね。

たまに勘違いされている方が多いのですが、ペアローンと収入合算は似ている様で内容が全く異なるものです。ペアローンは夫婦がそれぞれ別のローンを組みますが、収入合算は夫婦のどちらかが主債務者となって住宅ローンを1本だけ組みます。返済期間は分けることができません。

ペアローンと収入合算の違いを下記にまとめましたので、比較する際の参考にしてください。

ペアローンと収入合算の違い(フラット35の場合)

ペアローン収入合算
契約夫婦それぞれ住宅ローンを契約する(2本立て)夫婦のどちらかが主債務者となって住宅ローンを契約する
返済期間返済期間を分けて設定できる返済期間を設定できるのは1本のみ
連帯保証/連帯債務夫と妻それぞれがお互いの連帯保証人になる収入合算者が連帯債務者になる
団体信用生命保険夫婦ともに加入しなければならない主債務者のみ加入
住宅ローン控除各自のローン残高に応じて夫婦ともに適用可能主債務者のみ適用可能
ローン事務手数料2回分1回分
住宅ローン借り換え主債務者のみ審査夫婦で審査

返済期間を分けて組みたいのなら、ペアローン一択です。ペアローンで組めば、住宅ローン控除を夫婦それぞれ受けられるので、1本で組むよりも減税効果が高い場合もありますが、事務手数料が2回分かかるのでご注意ください。また、夫婦どちらかが働けなくなった場合はどうやって返済するのか、ご夫婦で話合った上で検討してくださいね。

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[2]繰り上げ返済を上手に使おう

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ここまで返済期間についてお話してきましたが、返済期間を短くしたいとお考えの方は繰り上げ返済を活用してみてはいかがでしょうか。

繰り上げ返済とは

繰り上げ返済は、毎月支払う返済額とは別に、ある程度まとまった額を返済する方法です。

繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。

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期間短縮型

月々の返済額は変えずに、残りの返済期間を短縮する方法。

・毎月の返済額は変わらない
・返済期間が当初より短縮される
・返済期間が短くなるため、利息軽減効果が高い

返済額軽減型

残りの返済期間は変えずに、繰り上げ返済をした金額を毎月の返済額に充当する方法。

・返済期間は変わらない
・毎月の返済額を減らすことができる
・返済期間短縮型よりも利息軽減効果は低い

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具体的にどのような効果があるのかシミュレーションしてみましょう。

期間短縮型の場合(借入金額:3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし・100万円を一部繰り上げ返済する場合)

1年後3年後5年後
減らせる利息短縮できる返済期間減らせる利息短縮できる返済期間減らせる利息短縮できる返済期間
1%約39万円16ヵ月約36万円16ヵ月約34万円15ヵ月
2%約94万円19ヵ月約86万円18ヵ月約79万円18ヵ月
3%約167万円23ヵ月約153万円21ヵ月約139万円20ヵ月

 

返済額軽減型の場合(借入金額:3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし・100万円を一部繰り上げ返済する場合)

1年後3年後5年後
減らせる利息月々の返済減少額減らせる利息月々の返済減少額減らせる利息月々の返済減少額
1%約18万円2,898円約17万円3,051円約16万円3,224円
2%約38万円3,385円約35万円35,34円約33万円3,703円
3%約59万円3,919円約56万円4,061円約52万円4,224円

期間短縮型は、繰り上げ返済するタイミングが早いほど利息を減らす効果が大きいです。そのため、「住宅ローンを早く完済したい人」、「利息を減らしたい人」にはおすすめです。ただし、繰り上げ返済を繰り返し行うことで手元の資金がなくなってしまうリスクもありますので、繰り上げ返済することばかりに夢中になるのは厳禁です。

一方、返済額軽減型は、利息を軽減する効果は低いですが、月々の返済額が減るので「夫や妻が今後退職をして収入が減る可能性がある」ご家庭に向いているでしょう。子どもの教育費がこれからかかる、老後資金を貯めたい、など、将来的に経済的負担が大きくなることが予想される場合に、検討してみてはいかがでしょうか。

繰り上げ返済を使う時に知っておくべき5つのこと

繰り上げ返済を上手に活用できれば、返済期間を短縮できたり、利息を減らしたりできるメリットがあります。ただ、手元の資金が減ってしまうデメリットもありますので注意が必要です。ここでは、繰り上げ返済を使う時に知っておきたいポイントについて説明します。

 

ポイント1:貯金やボーナスを使い切らない
繰り上げ返済で失敗しやすいケースです。万が一の時に備えて、貯蓄やボーナスをすべて繰り上げ返済に充てることはやめましょう。家族とのレジャーや趣味に使うお金も大事です。

 

ポイント2:繰り上げ返済は手数料がかかる
こまめに繰り上げ返済をすると、その分手数料がかかってしまいます。手数料無料の金融機関もありますが、そうではない場合はボーナスが出るたびに繰り上げ返済を行うのではなく、数年に一度、まとまったお金で繰り上げ返済を行う方が得策の場合もあります。

 

ポイント3:繰り上げ返済の金額の下限
フラット35の場合、100万円以上でないと繰り上げ返済ができないケースもあります。金融機関の中には、1万円以上から受け付けていることもある様ですが、先に説明したとおり、手数料がかかることがあるので注意しましょう。

 

ポイント4:繰り上げ返済と住宅ローン控除、どちらが得か
住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残高の1%相当額を所得税から控除される制度です。繰り上げ返済でカットされる利息よりも住宅ローン控除の方がお得なケースもあります。どちらが得をするのか試算をしてから選択してください。

 

ポイント5:冬のボーナスで繰り上げ返済をする時の注意点
ポイント4で説明しましたが、住宅ローン控除は年末時点の住宅ローン残高の1%相当額を所得税から控除される制度のため、ローンの残高が多い方が控除額は多くなります。冬のボーナスで繰り上げ返済をするよりも、住宅ローン控除で控除された方が得をする場合もあります。

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[3]まとめ

返済期間を分けたいのなら、2本立てローンかペアローン

1本のローンで返済期間の組み合わせは出来ません。必ず2本立てローンで組むことが必要となります。共働き夫婦の場合はペアローンという選択肢になりますね。その場合は事務手数料が2倍かかることもお忘れなく。

住宅ローンの返済期間は、後から変更するというのは不可能ではないですが、金融機関の中の審査が必要になるので、そう簡単なものではありません。契約者の年齢や年収によっても変更できるか変わってきますので、ご不明な点は住宅ローンを組んでいる金融機関までご相談ください。

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